8月26日は「火山防災の日」
昨年、衆参両院で全会一致により改正された「活動火山対策特別措置法」。この改正により、多くの方が活動火山対策に関心を持ち、理解を深められるよう、8月26日が「火山防災の日」として制定されました。
この「火山防災の日」は、明治44年8月26日に浅間山に日本で最初の火山観測所が設置され、器械を用いた近代的な観測が始まったことに由来して制定されています。
日本は火山大国
「災害の脅威」と「豊かな恵み」の両面を持つ火山。世界的に見ても、首都圏が火山災害に見舞われる可能性があるのは、日本とイタリアだけです。日本は特に火山に対する対策が必要です。
「活動火山対策特別措置法」の法改正により、資源を集中させたことで得られた火山研究の成果として、水蒸気噴火を起こしやすい火山の地下構造に共通点があることが判明したり、トレンチ・ボーリング調査やリモートセンシング技術など、従来の大学研究だけでは実現できなかった重機を用いた調査が、国の予算を投入することで可能になりました。
日本の火山防災に関する取り組み
近年では、富士山の火口ハザードマップが改定されるなど、火山対策が進んでいます。
そして、本年4月には火山調査研究推進本部が発足しました。地震対策本部は、阪神淡路大震災の経験をもとに設立されましたが、火山調査推進本部は、災害が発生する前に予防的な目的で設置されています。
火山に関しては、基礎データがまだまだ不足しています。噴火は1回で終わるとも限りません。噴火の様式も刻一刻と変化しています。様々な火山ハザードが想定される中、その拡がりをリアルタイムかつ事前に把握するためにも、基本的な調査研究が必要です。今後も、これらの研究を行う人材の継続的な育成が大変重要となります。
日本には現段階で111の活火山があり、そのうち気象庁では52の火山を常時観測しています。
気象庁では、地震火山オペレーションルームを設置し、常時監視を行っています。可視画像の他、熱活動の状態を観測するモニターなどを複数同時に表示してモニタリングしています。
航空機は火山灰を吸い込むと、機器の故障などの懸念があります。そのため、気象衛星ひまわりを用いて広範囲の火山灰観測を行っています。
桜島を懐く鹿児島県の取り組み
桜島は、110年以上前に大規模な噴火のありました。皆さんもご存知の方が多いであろう「大正噴火」です。現在は、姶良カルデラ下のマグマの蓄積が、大正噴火前のレベルにほぼ戻っていると推定されています。
鹿児島県では、犠牲者0を目指して、積極的に各種防災対策訓練などを行っています。小学校では、コーラを使った噴火実験などユニークな学習も行っているそうです。
雲仙・普賢岳の反省
日本には、本当に身近に火山があります。雲仙普賢岳も、子供たちが遠足で訪れるような山でした。
皆さんも記憶にあるであろうあの災害の前には、住民から消防署に「山火事がある」との通報が相次いだそうですが、その時点では火山として認識されていなかったそうです。そこから約3ヶ月後の2月に新たな火口が誕生し、5月には溶岩ドームが形成されました。同24日には最初の火砕流が発生しました。火砕流の危険性が十分に把握されていなかったことなどが重なり、多くの犠牲者を出したのが、雲仙普賢岳の災害でした。今回行われた「火山防災の日制定記念イベント」では、「様々なシグナルがあったにもかかわらず、それを受け取ることができなかった」と、ご自身も間一髪で難を逃れた雲仙岳災害記念館館長の杉本氏が反省の弁を述べておられました。
なぜ危険な地域に住み続けるのか
杉本館長は、現在も雲仙・普賢岳の近くにお住まいです。なぜ危険な場所に住み続けるのでしょうか。火山は噴火により大きな災害をもたらします。しかし、それと同時に、美しい景観や温泉、湧水、肥沃な土壌など、多くの恵みを与えてくれます。だからこそ、人は火山と共に暮らし続けるのです。
予知の大変難しい地震、まだまだ情報の少ない火山、多くのリスクと隣り合わせの日本ですが、世界的に見ても一切引けを取らない豊かな自然。理学的なアプローチだけでなく、社会学的なアプローチを積極的に行うことで、犠牲者0を目指し、火山と共存できる日本を醸成していかなければならないと強く感じました。
火山や地震を対岸の火事としない意識づくりを
9月1日の防災の日も近づいています。自然を知れば、命が助かるかもしれません。この知識を人に知らせたら、その人もまた命が助かるかもしれません。「防災」や「防災訓練」というと、なんだかとっつきにくく感じる方もいらっしゃると思いますが、せっかく定められている「火山防災の日」「防災の日」です。これをきっかけに、微力ながら、私も防災士として、できる限りの情報発信を行っていきたいと思います。すぐにできる防災対策の一つに、ご近所の方と、「顔の見える関係を作っておくこと」ということもあります。気恥ずかしい部分もありますが、ご近所の方と挨拶しあうことも、有事の際に自分そして周囲の方の命を守るきっかけにもなります。改めて心がけたいなと思うところです。
そして、議員としても、国民生活を阻害することなく、雄大な大自然を正しく恐れて、そして共存していけるような法整備を心掛けて、取り組んでまいる所存です。